戦国時代の山城は、土塁と空堀(からぼり)とで仕切られた郭を山の高低差を利用しながらたくみに配置して、小人数で立てこもり、多数の敵を迎えうつためのまさに実戦に備えた要塞です。杉山城は本郭を中心として北・東・南の三方向にそれぞれ二の郭、三の郭を梯段(はしごだん)状に連ね、さらに大手口に面しては外郭(そとぐるわ)と馬出郭(うまだしぐるわ)、井戸に面しては上方からこれを防禦する井戸郭が配置されています。また帯郭や空堀は複雑に入り組んでおり、敵にとっては混乱する迷路であっても、城方にとっては敵の目をかすめて郭間の連絡をとる通路としても機能していたことがわかります。
1 大手口
大手の小口(城や郭の出入口)付近は非常に複雑な構造をしています。外から門をくぐって左側へ細い通路を登ると外郭へ入ることができますが、正面には高い土塁が立ちはだかっており、左側は深い空堀がL字形にめぐっています。城に入ろうとする敵兵は横から矢を射られるようになっています。
5 南3の郭から南2の郭
南3の郭から南2の郭への入り口「虎口(こぐち)」は正面ではなく右側に折れ曲がる「食い違い虎口」となっています。攻め寄せてきた敵兵はここでも側面からの攻撃さらされることになります。
6 井戸跡
城にこもって戦う「籠城(ろうじょう)戦」をするときに、最も必要なものが飲料水です。この水を確保するために、城には井戸が掘られ、とくに強力な防禦でかためられています。杉山城には2カ所の井戸がありましたが、大石で覆われた井戸は今でも年間を通じて水が渇(か)れることはありません。